超微細構造

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水素における微細構造 (fine structure) と超微細構造 (hyperfine structure)

超微細構造: Hyperfine structure)とは、原子物理学において、原子分子エネルギー準位(あるいはスペクトル)に含まれる小さな分裂を表す。 これは運動する電子磁気双極子モーメント核磁気モーメントとの相互作用により起こる。

理論

古典物理学的に考えると、原子核の周りを回る電子は電荷を持つため磁気双極子モーメントを持つ。この磁気双極子モーメントと(核スピンによる)核磁気モーメントとの相互作用が超微細分裂を引き起こす。

しかし、電子スピンがあるため、軌道角運動量がゼロのs亜殻電子についても超微細分裂が起こる。ここで、電子の確率密度は核の内部 ( r = 0 {\displaystyle r=0} ) でもゼロにならないため、磁気双極子相互作用はより強い。

水素原子の超微細分裂とボーアのエネルギー準位との関係は

m m p α 4 m c 2 {\displaystyle {\frac {m}{m_{p}}}\alpha ^{4}mc^{2}}

のオーダーである。ただし

m は電子の質量
mp は原子の質量
α微細構造定数 (1/137.036)
c光速

である。

水素以外の原子については、核スピン量子数 I {\displaystyle {\vec {I}}} と電子の全角運動量 J = L + S {\displaystyle {\vec {J}}={\vec {L}}+{\vec {S}}} (ここで、 L {\displaystyle {\vec {L}}} 軌道角運動量 S {\displaystyle {\vec {S}}} スピン角運動量を表す。)とが結び付き、原子の全角運動量 F = J + I {\displaystyle {\vec {F}}={\vec {J}}+{\vec {I}}} となる。

したがって超微細分裂は

Δ E h f s = μ I B J = a 2 [ F ( F + 1 ) I ( I + 1 ) J ( J + 1 ) ] , {\displaystyle \Delta E_{hfs}=-{\vec {\mu }}_{I}{\vec {B}}_{J}={\frac {a}{2}}[F(F+1)-I(I+1)-J(J+1)],}

となる。ただし

a = g I μ N B J J ( J + 1 ) , {\displaystyle a={\frac {g_{I}{\vec {\mu }}_{N}{\vec {B}}_{J}}{\sqrt {J(J+1)}}},}

であり、 μ N {\displaystyle {\vec {\mu }}_{N}} は核の磁気双極子モーメントである。


この関係は「エネルギー準位は ( J + I ) | J I | + 1 {\displaystyle (J+I)-|J-I|+1} に分裂する」というランデの間隔則 (Lande interval rule) に従う。

Δ E h f s {\displaystyle \Delta E_{hfs}\approx \hbar } であり、超微細構造は微細構造よりも更に微細である。

より詳細な議論のためには、核四重極モーメントについても考慮する必要がある。これは hyperfine structure anomaly と呼ばれる。

歴史

超微細構造は1881年に既にアルバート・マイケルソンにより光学的に観測されていた。しかし、説明は1920年代量子力学に依らなければできなかった。1924年ヴォルフガング・パウリは核磁気モーメントを理論的に提案した。

1935年に M. Schiiler と T. Schmidt はhyperfine structure anomalyを説明するために核四重極モーメントを提案した。

応用

関連項目

典拠管理データベース: 国立図書館 ウィキデータを編集
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