愛の支配

愛の支配
ザ・フーシングル
初出アルバム『四重人格
B面 "ウォーター"
リリース
規格 レコード
録音 1972年5月、1973年6月
ジャンル ロック
時間
レーベル トラック/MCA
作詞・作曲 ピート・タウンゼント
プロデュース ザ・フー、グリン・ジョンズ
ザ・フー シングル 年表
5:15 (5時15分)
(1973年)
"愛の支配"
(1973年)
リアル・ミー
(1974年)
四重人格(Disc2) 収録曲
ザ・ロック
(6)
愛の支配
(7)
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愛の支配」(あいのしはい - Love, Reign o'er Me)は、イングランドロック・バンドザ・フーの楽曲。作詞・作曲はメンバーのピート・タウンゼント。アルバム『四重人格』(1973年)収録。

解説

ロック・オペラ『四重人格』のフィナーレを飾るバラード。元々は1972年に制作されるも未完に終わったロック・オペラ『ロック・イズ・デッド~不死身のハードロック』のために作られた[注釈 1][1]

『四重人格』は4つの人格を持つ架空のモッズ青年ジミーを描いた内省的な物語[注釈 2][注釈 3]で、自殺寸前に追い込まれた彼が、小舟を盗んで海にこぎ出して沖合いの岩にたどり着き、そこで自分が求めていたものを見つけて終わる[2]。作者のタウンゼントによれば、タイトルにもある「Love reign o'er me(愛が俺を支配する)」というフレーズの意味は、「ジミーがばらばらだった自分の人格を一つにまとめ上げた苦痛と歓喜が入り混じった叫び」とのこと[注釈 4]。最後に彼がどうなったのかははっきりと提示されず、タウンゼントは「ジミーが命を絶つかどうかは誰にも決める権利はない、ジミー本人が決めること」としている[3]

アメリカではシングルカットされ[4]、76位にランクインした[5]。シングル・バージョンでは前奏と終奏がアルバム・バージョンより短縮されている。

映画『さらば青春の光』

「愛の支配」は『四重人格』を原作にした映画『さらば青春の光』(1979年)[注釈 5]で、ブライトンの大乱闘から帰ったジミーが住む所も仕事も友人も愛用のバイクも失った後、失意と傷心の中でブライトンの思い出の場所を彷徨う場面で使用された[注釈 6]

同名サウンドトラック盤に収録された『四重人格』の楽曲には、メンバーで映画の音楽監督を務めたベーシストのジョン・エントウィッスルによってリミックスやベース・ギター・パートの再録音が行なわれた。「愛の支配」には、さらにフルート、金管楽器、ストリングスが加えられ、終奏も『四重人格』の収録版とは異なるものになった。

コンサート・パフォーマンス

「愛の支配」は、『四重人格』の発表に伴って1973年10月から1974年2月まで行われたツアーのコンサート全てで披露された[6]1982年9月から12月まで行われたフェアウェル・ツアー[7]で再び取り上げられ、1985年7月13日のライヴ・エイド[8]1989年の結成25周年記念ツアー[9]でも披露された。

フェアウェル・ツアーと結成25周年記念ツアーからの音源は、公式ライブ・アルバム『フーズ・ラスト』(1984年)と『ジョイン・トゥゲザー』(1989年)にそれぞれ収録されている。

カバー

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 「愛の支配」の他にも、この作品から『四重人格』に流用された曲がある。
  2. ^ 1960年代の中期に実在したモッズという若者集団に属するジミーの人格が暴力的(A tough guy)、ロマンティック(A romantic)、絶望(A beggar, a hypocritic)、狂人(A bloody lunatic)という4つの人格から成り立っていることを取り上げた作品である。
  3. ^ ロック・オペラではあるが、ジミー以外の登場人物はゴッドファーザーとベルボーイだけで、17曲の収録曲のうちゴッドファーザーが'The Punk and The Godfather'、ベル・ボーイが'Bellboy'で、それぞれジミーと短い会話をかわすかたちで登場した。残りの15曲のうち、インストゥルメンタルの2曲を除いた13曲は全てジミーの独白で、彼の父親も憧れの女の子も彼の独白で描写されただけだった。
  4. ^ タウンゼントが記したアルバムのライナーノーツの末尾には、"A beggar, a hypocrite, love reign o'er me."とある。
  5. ^ 原題は『四重人格』と同じくQuadropheniaであるが、『四重人格』と異なりジミーの人格が4つの人格から成り立っているという点には触れていない。そして『四重人格』には登場しない人物が多数加えられて物語が加筆され、それがジミーの独白によってではなく登場人物の日常会話によって展開する形式を採った。
  6. ^ 最後にジミーは盗んたバイクをビーチ―岬の断崖絶壁から落として破壊した後、岬から歩いて立ち去って行く。

出典

  1. ^ 『エニウェイ・エニハウ・エニウェア』アンディ・ニール、マット・ケント著、佐藤幸恵、白井裕美子訳、シンコーミュージック刊、2008年、ISBN 978-4-401-63255-8、240-241頁
  2. ^ 『エニウェイ・エニハウ・エニウェア』アンディ・ニール、マット・ケント著、佐藤幸恵、白井裕美子訳、シンコーミュージック刊、2008年、ISBN 978-4-401-63255-8、253頁
  3. ^ 『フー・アイ・アム』(ピート・タウンゼント著、森田義信訳、河出書房新社刊、2013年 ISBN 978-4-309-27425-6)217頁
  4. ^ “Discogs”. 2023年9月20日閲覧。
  5. ^ The Who - Chart history | Billboard
  6. ^ McMichael & Lyonc (2004), pp. 201–218.
  7. ^ McMichael & Lyons (2004), pp. 268–273.
  8. ^ McMichael & Lyons (2004), p. 274.
  9. ^ McMichael & Lyons (2004), pp. 276–281.
  10. ^ Pearl Jam - Chart history | Billboard

引用文献

  • McMichael, Joe; Lyons, 'Irish' Jack (2004). The Who Concert File. London: Omnibus Press. ISBN 1-84449-009-2 
ロジャー・ダルトリー - ピート・タウンゼント
ダグ・サンダム - ジョン・エントウィッスル - キース・ムーン - ケニー・ジョーンズ
ツアー・メンバー

ジョン “ラビット” バンドリック - ザック・スターキー - サイモン・タウンゼント - ピノ・パラディーノ

スタジオ・アルバム
ライヴ・アルバム

ライヴ・アット・リーズ - フーズ・ラスト - ジョイン・トゥゲザー - ワイト島ライヴ1970 - BBCセッションズ - ライヴ・アット・フィルモア・イースト1968

コンピレーション

マジック・バス〜ザ・フー・オン・ツアー - ダイレクト・ヒッツ - ミーティ・ビーティ・ビッグ・アンド・バウンシィ - オッズ&ソッズ - キッズ・アー・オールライト (サウンドトラック) - フーズ・ミッシング - トゥーズ・ミッシング - Thirty Years of Maximum R&B - ゼン・アンド・ナウ

EP

レディ・ステディ・フー - ワイアー・アンド・グラス

主な楽曲
映画・映像作品

キッズ・アー・オールライト - Thirty Years of Maximum R&B Live - ワイト島ライヴ1970 - ザ・フー:ライヴ・アット・キルバーン - ザ・フー:アメイジング・ジャーニー - Tommy & Quadrophenia Live With Special Guest - Quadrophenia Live In London - The Who & Special Guests - Live At The Royal Albert Hall - Who's Better, Who's Best - Live in Boston

関連アルバム

トミー (ロンドン交響楽団) - トミー (オリジナル・サウンドトラック) - さらば青春の光 (サウンドトラック) - サブスティテュート〜ザ・ソングス・オブ・ザ・フー

関連映画・映像作品

モンタレー・ポップ フェスティバル'67 - ロックンロール・サーカス - ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間 - ワイト島1970-輝かしきロックの残像 - トミー - さらば青春の光 - ランバート・アンド・スタンプ

関連項目

モッズ - トラック・レコード - ロック・オペラ - The Who's Tommy - Teenage Cancer Trust

関連人物

ピーター・ミーデン - キット・ランバート - クリス・スタンプ - シェル・タルミー - ジョン・"スピーディ"・キーン - メヘル・バーバー - グリン・ジョンズ - ビル・カービシュリー - ロバート・スティグウッド

関連バンド
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