バールベックの巨石

バールベックにあるジュピター神殿の「トリリトン」
「南の石」(別名「ハジャル・ヒブラ(妊婦の石)」)

バールベックの巨石は、中東・西アジアのレバノンにある宗教都市バールベック[1]世界遺産として登録されているジュピター神殿の土台として使われている3つの巨石のこと[2]

概要

この巨石は、通称「トリリトン」(驚異の三石)と呼ばれる組み石で、重さは650t-970t[3]。石切り場から1km運ばれ、少なくとも10mは持ち上げられて他の巨石と組まれている[4]が、石切り場から神殿までの道路や高台へ持ち上げる傾斜路の形跡は発見されていない[5]。人力では15,000人の人間が必要な計算になるが[6]、それだけの人間の力をまとめて石に働かせるのは現実問題として不可能であるとされている[7]。その根拠は、「1トンの切石を1日1マイル(1.6キロ)運搬するのに16人必要」というイギリスBBCの番組内での実験であるが[2]、しかしながら、何も1日1マイルのハイペースで動かす必要はなく、少人数でも長い時間をかける(ロシアの例をとると、有名なピョートル大帝像「青銅の騎士」の土台の1350tの花崗岩を6km動かすのに人力で3年かかった)[8]、こうした工事にはローマの駐留軍が当たることが多く[6]、人手にもあまり問題はない、ということが忘れられている[9]。また、1977年の実験では、滑車とロープだけで500人程度で600tの石を移動させることが可能だと証明されている[10]

 なお、南西1kmの石切り場には[1]南の石と呼ばれる[11]更に巨大な切石があり、高さ4.2m、幅4.8m、長さ21.5m、重さは1200t-2000tと見積もられているが[12]、この南の石に関しては下部が地下の岩盤に繋がったまま動かされた形跡はない[13]。しかし、これも動かされていると言うオーパーツ論者もいる[14]

長年世界で最も大きな加工面を持つ石造物とされてきたが、2014年にドイツの調査隊が発掘作業を完了しあぐねているのをうけレバノン大学と古物局のレバノン人たちが行なった発掘作業によって、ジャニーン・アブドゥルマスィーフ博士の監督のもと、レバノン大学の学生グループが「ハジャル・ヒブラ(妊婦の石)」の記録を破り世界最大規模となる石造物を発見した[15]

関連項目

脚注

[脚注の使い方]

参考文献

  • 占部百太郎『聖地紀行』叢文閣、1931年、57頁。doi:10.11501/1174836。 NCID BN15371577。OCLC 682961392。国立国会図書館書誌ID:000000841193。https://dl.ndl.go.jp/pid/1155367/1/522023年3月5日閲覧 
  • 羽仁礼『超常現象大事典』成甲書房、2001年、166頁。ISBN 9784880861159。 NCID BA51412836。OCLC 674959758。国立国会図書館書誌ID:000002997289。https://books.google.co.jp/books?id=aw1KNBN4uPUC&pg=PA166#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 桐生操『知れば知るほどおそろしい世界史 : 古代文明~中世の暗黒』祥伝社、2004年、190頁。ISBN 9784396313531。 NCID BA71844662。OCLC 674679173。国立国会図書館書誌ID:000007429657。https://books.google.co.jp/books?id=aUqfDQAAQBAJ&pg=PT190#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
  • ASIOS『謎解き超常現象』彩図社、2009年、58-63頁。ISBN 9784883926862。 NCID BA89766547。OCLC 676506203。国立国会図書館書誌ID:000010087167。https://books.google.co.jp/books?id=oshdDAAAQBAJ&pg=PA58#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 田中真知『世界の聖地file : 知られざる神秘の聖域を完全網羅! : 決定版』学研パブリッシング、2010年、96頁。ASIN B00W3J1BD6。ISBN 9784054046702。OCLC 703268645。国立国会図書館書誌ID:000010927399。https://books.google.co.jp/books?id=K2EbCAAAQBAJ&pg=PA96#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 知的発見!探検隊『本当は怖い古代文明』イースト・プレス、2011年、211頁。ISBN 9784781606613。 NCID BB08478860。OCLC 763088394。国立国会図書館書誌ID:000011250514。https://books.google.co.jp/books?id=4EB-DQAAQBAJ&pg=PA211#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 並木伸一郎『超古代オーパーツ図鑑 : ヴィジュアル版』学研パブリッシング、2014年、155頁。ISBN 9784054061590。 NCID BB19050300。OCLC 897124154。国立国会図書館書誌ID:025849344。https://books.google.co.jp/books?id=gY1ECQAAQBAJ&pg=PA155#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 学研教育出版『失われた文明の大百科』学研教育出版、2014年、104頁。ISBN 9784052039898。 NCID BB17068247。OCLC 880129677。国立国会図書館書誌ID:025425492。https://books.google.co.jp/books?id=TQpnCgAAQBAJ&pg=PA104#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • ウィサーム・イスマーイール「レバノン:「ハジャル・ヒブラ(妊婦の石)」よりも大きい古石造物の発見」『Al-Nahar』2014年、2023年3月5日閲覧 
  • 岡田英男『なぜ「世界遺産」は宇宙人のためにつくられたのか?』竹書房、2015年、49-53頁。ISBN 9784801905115。OCLC 922844064。国立国会図書館書誌ID:026738571。https://books.google.co.jp/books?id=isDrCgAAQBAJ&pg=PT49#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 南山宏『オーパーツ超古代文明の謎』二見書房、2016年、92頁。ASIN 4576161520。ISBN 9784576161525。OCLC 961804132。国立国会図書館書誌ID:027610289。https://books.google.co.jp/books?id=ahTxDwAAQBAJ&pg=PT92#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 松岡信宏『世界のオカルト遺産 調べてきました』彩図社、2022年、59頁。ISBN 9784801305991。 NCID BC1616545X。OCLC 1327944349。国立国会図書館書誌ID:032096423。https://books.google.co.jp/books?id=i1lwEAAAQBAJ&pg=PA59#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 並木伸一郎『ムー的世界の新七不思議』学研プラス、2022年、160頁。ASIN B0BMLRXPYP。ISBN 9784651202501。OCLC 1341381244。国立国会図書館書誌ID:032240595。https://books.google.co.jp/books?id=FzacEAAAQBAJ&pg=PA160#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧 
  • 笠倉出版社『世界遺産ミステリー : 謎多き建造物と隠された真実』笠倉出版社、2022年、12-13頁。ISBN 9784773028638。 NCID BC16894777。OCLC 1347414294。国立国会図書館書誌ID:032363608。https://books.google.co.jp/books?id=FTCIEAAAQBAJ&pg=PA13#v=onepage&q&f=false2023年3月5日閲覧